魔念村殺人事件
 再び外に出ると、灰色の雲から小雨がパラパラと降ってきていた。

 廃村はやけに静かで、今ここにいる七人しか存在しない。

 それぞれが車から食べ物を出している時、陸は疑問に思ったことを小声で春樹に訊いた。


「春樹、さっきのわらべ唄だけれど、短いよな。もしかして続きがあるんじゃないか?」


「よく分かったな。確かに続きはある。さっき章吾が読んだのは一番だ。わらべ唄は全部で三番まであるんだよ」


 ケムンドウの名を騙って、誰がわらべ唄を書いた手紙を置いたのだろう。その人物は、魔念村出身の人だというのは間違いないし、この六人の中の誰かかもしれない。もし六人の中の誰かだとしたら、今日封筒を置いたのではないのか? さっき章吾が云っていたが、一番最初に訪れた瑞穂達三人が見た時には、既に封筒はテーブルに置いてあったのだから。それに六人以外の魔念村出身者が封筒を用意した可能性もある。どちらにしても、一体目的は何なのだろう。

 公民館から何軒かの家を見渡すと、軒先にぶら下げられている鴉の嘴を見立てたお守りが、風で揺れている。それは奇妙な光景で、わらべ唄を思い出させる。まるでそのままじゃないか。

 小雨は本降りに変わろうとしていた。まるで大粒の涙が降るように。

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