魔念村殺人事件
 陸が怪訝な表情をすると、今度は章吾が説明した。


「石川さん、この魔念村では雨の日に村を出てはいけないんですよ。村で降る雨はケムンドウの涙と云われています。そしてケムンドウが泣いている間は、村にいなければいけません」


 そうか、春樹が車の中で云いかけたことは、雨が降ったら帰れなくなるということだったんだ。ははぁ、それを俺に云い辛くて口を閉じたのか。  

 それにしても、と呆気に取られて口をぽかんと開けていると、今度は瑞穂が続きを説明した。


「ごめんなさいね。石川さんは魔念村出身ではないから、不思議に思うでしょう。廃村になってしまっているわけだけれど、夜を過ごすのはこの公民館では駄目なの。夜を過ごす場所は、お守りがぶら下がっているところじゃないといけないのよ。だから、それぞれ昔住んでいた自分の家や誰かの家にするしかなさそうね」


 瑞穂だけではなく、他の魔念村出身者達は皆それを知っているようだった。だから鈴音が何処に泊まればいいのかしらと云ったのだろう。

 何だかこの村には色々な決まりがあるようだった。
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