魔念村殺人事件

「陸、お前は俺が前住んでいた家に泊まればいい。一応布団やら何か残っているはずだから」


「私も春樹の家に泊まろうかなぁ」


　鈴音は春樹を悪戯っぽい目で見ながら甘えた声を出した。


「鈴音、お前は堀井家に泊まるんだよ。嫁入り前の女を、男二人のいる家に泊まらせるわけにはいかない」


　章吾は意外にも古い考えの持ち主で、そんな章吾に鈴音は口を尖らせ子供のようにツンと横を向いた。納得がいかないのかもしれない。

　すると正信は、上目使いで瑞穂を見た。


「お、俺は瑞穂姉ちゃん家に泊まらせて欲しい。独りで元の自分の家に泊まるの嫌だよ」


「私も。瑞穂姉ちゃんの家に泊まりたい」


　正信に続き、真優までも瑞穂に甘えていた。どうやら春樹から聞いた通り、瑞穂は皆のお姉さん的存在らしい。


「分かったわよ。二人共まだまだ子供みたいね」


　瑞穂はそう云って優しい笑顔を見せた。