魔念村殺人事件
「石川さん、鈴音が云ったみたいに、それはあり得ないわ。今までずっと行方が分からなかったのよ。それに美紀ならば、すぐに私達の誰かに必ず連絡をするはずだわ」


　悲しそうな表情で美紀のことを語ると、章吾も声を震わせながら瑞穂と同じようなことを云った。


「そうだよ。美紀だったら、絶対誰かに連絡するはずだ。連絡が来ないということは、ケムンドウに連れて行かれてしまったのかもしれない」


　どうやら章吾はケムンドウの存在を信じているようだった。他の者達もそれは同じなのだろう。

　春樹は俯いたまま、視線はどこか遠くを見ているようだ。記憶の中に埋もれているのかもしれない。


「でもケムンドウは、美紀を連れて帰ってきたのかもしれないよ」


　そんな正信は真剣な顔をしていた。真優は春樹のように俯いたままだが、しきりに視線を泳がせていたのである。

　やはり魔念村の人々は、ケムンドウの存在を信じているのか。
　陸はそう確信した。　


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