魔念村殺人事件
 一体誰がこんなこと……。

 もう手紙は誰かの悪戯だという可能性はない。これは悪意を持った何者かが、ケムンドウの名を騙り、美紀の名前を出し、この村に呼び出したというわけだろう。けれども、どうして真優が殺されなければならなかったのか。

 その時バタバタとたくさんの足音が聞こえ、章吾達が現れた。真優が死んでいることに気付いたらしい。鈴音と瑞穂がけたたましい叫び声を上げ座り込んだ。そして章吾は春樹の隣りに近寄り、黒縁眼鏡を外すと真優の亡骸を抱きしめ、声を上げて泣いた。正信は近寄ることも出来ず、少し離れた位置から動けずにいるようだった。

 ガジュマルの木の側で、しばらく雨に打たれながら――。

 とりあえず、公民館に入ろうという話しになったのだが、章吾は提案した。


「その前に、真優をこんなところに独りにしたくない。花村家に運ぼうと思うんだが」


「俺も手伝うよ。皆は公民館で待っててくれ」


 章吾と春樹が真優を彼女の住んでいた家でもある花村家まで運ぶことになり、残った者は公民館に入って待つことにした。

 陸は呆然と立ちつくしたままの正信の肩を優しく叩くと、正信は目を伏せた。

 そして、しゃがみ込んでいる鈴音と瑞穂を立たせると声をかけた。


「三人共、中に入ってましょう。このままじゃ風邪ひきます」
< 67 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop