魔念村殺人事件
「あぁ、何とかな。今、陸の探偵事務所の近くまで来ているんだ。行ってもいいか?」


 約束もしないで春樹が突然来ようとするなんて珍しいな。何かあったのか? 心なしか元気もないようだし。


「もちろん。仕事の帰りなのか? 俺は浮気調査が終わって、今丁度書類を作り終わったところだから、いつでもいいぜ」


 なるべく春樹のために、陸は明るく答えた。


「悪いな。後十分くらいで着くと思う。じゃ後で」


 やっぱり春樹のやつ元気ないな。そういえばあいつ、未だに同郷の彼女を引きずっているのかな。新しい恋人が出来たとか、結婚するって話しを聞かないし。俺の場合は知り合うきっかけが殆どない職業だしな。知り合うのは、浮気調査を依頼する人妻か、家出した娘息子を探して欲しいと依頼する両親、極めつけは、いかつい刑事くらいなもんだしな。

 陸は破れそうなソファにもたれて苦笑した。
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