魔念村殺人事件
「……私は悪くないわ。真優だって悪くない。美紀がいけないのよ」


 それだけ云うと車を飛び出し、公民館に走って行ってしまった。

 今のはどういう意味だ? 取り乱している彼女にこれ以上訊ける雰囲気ではなかった。

 美紀が何をしたというのだろうか。

 しばらくすると、瑞穂が遠慮がちに車の窓をノックした。

 はっと気付き、陸はドアを開けると瑞穂を後部座席に座らせた。

 
「鈴音ちゃんは大丈夫ですか?」


「ええ、何だか取り乱して戻ってきたのですけれど、章吾が鈴音に水を飲ませたり椅子に座らせて、今はぼんやりしてます。何かあったんですか?」


 瑞穂は怪訝そうな表情で陸に問うた。それはまるでいじめられた子供のことで、いじめっ子に諭すように話しかける先生のようだった。


「私の質問が良くなかったのかもしれません。まして真優ちゃんがあんなことになった直後ですし」


 陸はうなだれ俯いた。

 そんな陸に対し、瑞穂は優しい口調で云った。


「責めて云ったつもりはないので、誤解しないで下さいね」

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