魔念村殺人事件
　正信だけ離れた場所にいたのか。それなら美紀のことで知っている事実はなさそうだな。


「そうか。では最後に章吾さんを呼んできて貰えるかな？」


「は、はい」


　そう云って正信は車から出て行った。

　すると、章吾はすぐにやって来たのだけれど、近づくなり後部座席のドアを勢いよく開け、車に入ってくると黒縁眼鏡の奥で陸を見据えた。


「石川さん、鈴音に何云ったんですか？　今は落ち着いたものの、さっきは随分取り乱して戻ってきましたから」


　章吾は強い口調で云うと陸をねめつけた。


「少し質問させて頂いたんですが、急に取り乱してしまったんです。申し訳ありません」


　陸はなるべく穏やかに答えた。

　すると章吾は、鈴音がどんな質問で取り乱したのか気になった様子だった。

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