魔念村殺人事件
「夜はどうでしたか? 喧嘩した後、章吾さんと鈴音ちゃんは別々の部屋で?」


「もちろん。喧嘩しなかったとしても同じ部屋では寝ませんよ。堀井家は春樹の家の間取りと殆ど同じなので、俺がお茶の間の左側、右側が鈴音の部屋でした。鈴音が怒って先に部屋に戻ってからも俺は頭を冷やそうと、お茶の間でタバコを吸ってぼんやりしていました。すると部屋から鈴音の泣き声が聞こえてきて、始めは喧嘩のせいかと思ったのですが、ごめんねとつぶやくように云っていたのです。俺と喧嘩しても謝ってきたことなど一度もないので、もしかしたら俺に謝った言葉ではなかったかもしれませんが。その後は俺も自分の部屋に入り、寝ました。
 朝は俺が起きてお茶の間に来ると、鈴音も丁度入ってきて、しばらく他愛もない会話をしていると、突然瑞穂と正信が血相を変えて訪ねてきたのです」


 鈴音はごめんねと誰に対して云ったのだろう。真優か? 真優が美紀のことで何かを知っていて、口封じのために彼女を殺した? それならば、ごめんねと謝った時に既に真優を殺していなければ辻褄が合わないか。章吾とずっと一緒にいたのだから、鈴音が犯人だとしても、もっと後の話しになる。するとごめんねとは誰に向けて云ったのか……。

< 87 / 151 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop