魔念村殺人事件
 春樹は章吾を気遣っているのだろう。

 でも、ここは魔念村出身者ではない俺が開けた方がいいのではないか。そう思った陸は口を挿んだ。


「春樹、俺が読むよ。読ませてくれ」


 幸い誰も反対する者はおらず、春樹は頷くとテーブルから封筒を手に取り、陸に渡した。

 受け取った陸は封筒を開け紙を取り出し、声を出しながら読んだ。


「山から訪れて来るだろう。色とりどりの魔物達。ご馳走抱えているよ。誰が食べると云うのだろう」


 俺は読み終えると、顔を上げて一人一人の表情を見逃すまいとした。

 鈴音だけが顔を突っ伏したままであったが、その身体は明らかに震えていた。他の者達は皆同じように凍り付いており、ようやく口を開いたのは春樹だった。


「それ……わらべ唄の二番だよ」


 やっぱりそうか。第二の殺人の予告かもしれない。少なからずここにいる者達は薄々それに気付いているかもしれないが、口に出して云わない方がよさそうだ。口に出してしまえば皆の不安感を煽ることになるだろう。それに仲間同士、疑心暗鬼に陥りパニックになる可能性だってある。

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