魔念村殺人事件
「なぁ陸、ケムンドウに成りすました犯人はこの村に来ているんだろうか?」


「ん~。一軒一軒探してみるか」


 とにかく一軒一軒探した方が良さそうだと思った。

 すると、章吾は立ち上がり、黒縁眼鏡を人差し指で押し上げると、何かを決心したような顔をしていた。


「俺も行くよ。村に建っている家は全部で十一軒しかないから、もし犯人が潜んでいれば、男が多い方がいいだろう。犯人が一人とも限らないし」


 公民館に残るのは、瑞穂と正信と鈴音か……。

 正信は見た目が強そうだが、もしもの時に大丈夫だろうか。

 陸が不安そうにしていると、それに気付いた春樹が云った。


「陸、ここは瑞穂がいれば大丈夫だよ。こう見えても瑞穂は柔道が強いんだ。遠征でよく試合に行ってたし、県大会で優勝したことだってあるんだよ」


 瑞穂は顔を真っ赤にして恥ずかしがった。


「春樹、やめてよ。そんな昔の話し」


「瑞穂は腕相撲なんかも強かったんだぜ。細い腕なのに力持ちなんだよな」


「春樹ったら、もうっ」


 一番強そうな見た目の正信より、すらっとした体型の瑞穂の方が強いのかと思うと可笑しくて、俺は笑いを堪えた。

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