pure
少し離れた通路は


人の波に沿って


歩く人たちのシルエットが


見えた。


その中から


ビジネスバッグを左手に


こちらに向かって歩いてくる


人影があった。


「克己君?」


ガラス張りの窓の向こう側の


太陽が逆光になっていて


はっきりと顔がみえない。


リズムをとるように


急ぎ足で歩いてくる彼の顔が


はっきりと見えるところまで


近づいてきた。


大きな瞳は優しく微笑みながら


こっちを見ていた。


私は嬉しくなって


走りだしていた。



「来ちゃった。」


「来ちゃいましたね。」


「お久しぶり」


「お久しぶり・・・


メシ食べた?」


「少しだけ食べたよ。


新幹線の中で」


「俺 昼飯まだだから・・・


もう限界・・何か食べよう。」
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