pure
~パーティー会場~


「おや 雅子さん


今日は一段と美しいですね。


赤がよくお似合いだ。」


叔母と同じ年齢ぐらいの


紳士が満面の


笑顔で声をかけてきた。


鍛えられたからだに


ぴったりと


フィットしたタキシードは


きっと


オーダーメイドに違いない。


焼けた肌からこぼれる微笑


目じりのしわは 


人の良さを感じさせた。



「松本社長 御無沙汰してます。

相変わらずの

ゴルフ焼けですか?」



「お酒は飲まない

女遊びはしない。

唯一の道楽だからね。


今度 一緒に京都に

ゴルフに行かないかい?


秋なら 紅葉した美しい

京都の観光つきだよ。


愛子ちゃんも

いっしょにどう?」



「ありがとうございます。」



「上野君はゴルフしないの?」



叔母がこちらに向かって

歩いてくる男性に

声をかけた。



ふと 視線を向けると・・・




一瞬 


彼が時間の止まった会場を


笑顔で歩いてくるように


見えた。



さっきまで聞こえていた話声や


にぎやかな笑い声も


時間と共に


ストップしてしまった。







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