上辺だけ彼氏
これでいいの.
ガシャーン!!
あたしの手からスルリと抜けた空になっている缶は、おもいっきり音をたてて落っこちた。
その音と共に、廊下にいたみんながあたしの方へと振り向く。もちろん、あたしのずっと前にいた“彼氏”と彼氏に腕組んでいる女も。
『あ‥ごめんなさい、』
慌てて缶を拾おうとする。
「なにしてんだよ、ミカ」
少し笑いながらあたしの足元にある缶を、よく聞く声のひとに拾われた。
「ねえナオぉ?こんな女なんかほっといて早く行こーよぉ」
「ああ、行くか。
気をつけろよ?ミカ」
『あ、うん。
ありがと‥』
ナオはあたしの髪をくしゃりと崩してちょっと笑いながら“女”と一緒に行ってしまった。
行くときに“女”が勝ち誇ったような顔を見せたのをあたしは見逃さなかった。