特等席


家にむかっている途中、ポケットの中から携帯のなる音がきこえた。


歩くのをやめて携帯を耳にあてると、女の人の明るい声がひびいた。


『よ!!!みーやびっ!』


「…?てめー、誰だよ」


『あいかわらず雅、怖いっ。せっかくの可愛い顔が台無しよ?』


「だから、てめー誰だ」


『杏奈だよ!覚えてる?中学んときの』


「あん……な?杏奈!?うっそ~ん!!!久しぶりぃ」


『実は、田舎からこっちに引っ越してきたんだ♪』


「へ~!お帰りだねぇ。杏奈いなくなったから、退屈だったよぉ」

『あたしも~!!あのね、今日の夜合コンするんだけど……来ない?』


「むり。彼氏いるから」


『おねがい~!!人数足りないんだよ!!』


「……………」


『あたしが、帰ってきたパーティー開いてたって彼氏に言えば?ごまかせるよ』


「…」


『おねがーい』


「はぁ……。何時から?」


『やったーあ!!えっと、8じ30分から♪焼肉屋さんで』


「駅前の?」


『イェス、そのとーりっ』


「わかった。それじゃ、またね~」


『ありがと~、雅。愛してる~っ』


私は苦笑いを浮かべると「バーカ」と言って、携帯を閉じた。


神様……どうか何も起こりませんよーに。


私は再び歩きだした。
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