特等席


ぼーっとしながら歩いていると、いつもと何もかわらない我が家があった。


「はぁ………」


私は家が大嫌いだった。理由は2つ。


1つ。病気で目の見えなくなった父親を騙して離婚をし、再婚したこと。


2つ。私にたいする再婚相手の目付き。


家にはいると、涙目になっている母親が玄関に座っていた。


「雅っ……」


私は母親をにらむと、自分の部屋に向かおうとした。すると、母親が私の手をにぎった。


「はなせ」


「私が……私がどれだけ心配したと思ってるの!!」


「しらねーよ。考えたくもねぇ。」


「この2週間……家に帰ってこないでどこにいたのっ!!!」


「彼氏のとこ」


「今日は外出禁止よ!!あなたっ」


私はゾッとした。寒気がした。


リビングから気だるそうに歩いてくる男………


「お!よーやく帰ってきたか。どこに行ってたんだ?」


「彼氏の家だそうよ?あなた、私今日仕事があるの。だから今日この子が家から出ないように見張ってて」


「わかった」


男は、私の体をなめまわす様に見るとニヤっとした。


「ーーーーっ!!!!」


私は母親の手を振り払うと急いで家から逃げ出した。


「ま、待ちなさい!雅っ」


私は唇を噛みしめながら走った。
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