特等席


くやしいっ。早くこんなとこ……でていきたい!!


自然にあふれ出た涙は頬をつたって落ちていく。


走っていると、いきなり誰かが私を呼び止めた。


「雅っ!どーしたんだっ」


振り返ると、そこには大学生の兄がいた。


「翔ちゃんっ……」


私は兄にとびついた。


「理由は後できくから。オレの家くるか?美里いるけど、大丈夫?」


「めーわくじゃないなら」


4つ上の兄は、彼女と同居している。兄は再婚相手の男から、よく暴力をふるわれていた。だから、大学にあがると同時に家をでたのだ。


兄は、私に「一緒に暮らさないか?」と言ったけど、断った。


兄が彼女さんと一緒に暮らすと知っていたから…。


兄は頭がよく、奨学金で大学に通っている。
私は、そんな兄が大好きで、よく友達からブラコンと言われていた。


「散らかってるけど、気にすんなよ?」


「うんっ!」


「なに嬉しそうにしてんだ?」


「だって、翔ちゃんと会うの久しぶりだから」


「変な奴」


「えへへっ♪」


変な奴………。自分でもそうおもう。
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