【続】恋の坂道発進―2010年ホワイトデー短編―
「ドライブ連れて行ってあげるね~!!」
「いや、遠慮しとく」
「ひどい!!塩崎先生のいじわる」
「俺が連れてってやる」
憎まれ口ばかり叩いてしまうから、肝心な言葉を言えないけど。
「なずな」
直接名前を呼ぶのは初めてだった。
「俺、お前のこと好きだから。ゆっくりしっかり練習しろ。遅くなっても、待っててやるから」
キーケースをぎゅっと握りしめたなずなは、瞳に涙をためながらうなづいた。
こんな顔もするんだ。
子供っぽいところもあるけど、時々大人びた顔をしたりもする。
ドキドキさせんじゃねーよ。
「時々、来いよ。ここに」
「いいの?」
本当は卒業してからだけどさ。
なずなはまだまだ卒業できねぇだろうから。