【続】恋の坂道発進―2010年ホワイトデー短編―
「キスしていい?」
なずなが返事をする前に。
なずなの唇を奪った。
びっくりして目をパチクリさせたなずな。
俺は右手でその目をそっと閉じさせる。
「好きだ」
仕事に追われていた俺の前に、突然現れた不思議少女。
まっすぐで、ばか正直で。
S字もクランクも、坂道発進も、一時停止さえもへたくそで。
隣に乗っていると、酔いそうになる運転だけど。
俺がいるから。
どんなへたくそでも、俺が見ててやる。