【続】恋の坂道発進―2010年ホワイトデー短編―
「塩崎先生、お疲れさま」
俺の車の後ろにしゃがみ込んでいたなずなが、ひょっこり顔を出す。
「バレたらやばいから、後ろに乗れ」
いつからだろう。
他の先生がなずなと車に乗っているのを見るのが辛くなっていた。
なずなの危ない運転や、わけのわからん言動を理解してやれるのは、俺しかいないと。
変な使命感。
俺しかいないんだと。
「先生の車、いい匂い~」
後部座席に座れとは言ったけど、別にそこまで隠れなくても。
後部座席の足元に丸まっている。
「お前、ばかだな」
「どうしてですか?」
「そこ、臭いだろ?」
「いい匂いです」
ばかすぎて。
天然すぎて。
たまんなくかわいい。