復讐は復讐を、血は血を呼ぶ

 帰る途中雨に降られ、ミセス・ラベットのパイ屋のドアを開けると、店のキッチンで害虫退治をして、麺棒を振り上げていた彼女は動きを止め、笑顔を繕った。ドアの正面に店の中の小さな調理場としてカウンターがあるのだ。客席は窓辺にボックス席があり、5個ほどあった。
「お、おかえりなさい、一雨降り出しちゃったわね。暖炉で暖まって頂戴。風邪をこじらしたら大変だわ」
 恥ずかしそうに麺棒をテーブルに置き、私たちを店の奥の自分の部屋に連れて行った。

「さぁ、体を拭いて頂戴。あ、あんたはこっち」
 そう言って店の2階へ上がった。
「一応家族が一人増えるって言うから、簡単だけどあんたの部屋を作っておいたのよ。後はあんたの好きにしなさいな」
 階段の踊り場で、彼女は私に向かって言った。
「あ、ありがとうございます」
「そんな固くならなくていいわよ。あんたは今日から家族なんだから」
 そう言って私の頭をポンポン撫でた。
「あんた名前は?」
「サーシャ」
「そう、私はラベット」
 なるほど、彼女の笑顔は確かに母親のようだ。見ていると落ち着いてくる。

< 6 / 10 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop