復讐は復讐を、血は血を呼ぶ

 2階に上がり、細長い廊下のすぐ横のドアを開けた。
 ドアの正面に窓があり、カーテンが引いてあった。家具はベッドと色の禿げかかったテーブル、棚と小さな洗面台があるだけだ。
「ほんとごめんなさいね、お金があれば家具も新調出来たんだけど…この部屋、死んだ旦那の部屋でね、そのままにしておいたのを掃除しただけなのよ。勝手に好きなようにしていいからね。それじゃあ着替えてから下に来なさいな」
 部屋を出て行こうとすると、
「あんた、着替えは?」
「…無いです…」
「……待ってて。私のが何かあれば…」
 そう言って部屋を出て行った。
「まったく、トッドさんも何か買ってきてくれればいいのに…」
 ドアの向こうで彼女の声が聞こえる。彼女の独り言はだんだん遠ざかって言った。一人残された私は狭くて、でもそれが丁度いいこの部屋を見回した。床が傷んで歩くたび音を立てる。
 洗面台は大きな曇った鏡と隅に青コケの生えた石膏の洗面台で、隅に何か置いてあったのかガラスコップが置いてあった。
 鏡に15,6の私が写る。瞳とともに闇を閉じ込めたように黒い髪。近頃気になりだしたそばかすとできもの。怖いくらいの白い肌。
 前の体ではない、今違う人間で生きているのが不思議なくらいだ。
 いつかこの体を捨てるときが来るだろう。この小さな体では出来ないことも多いだろう。

 この体は、私が憑かなかったら、一体どんな人生を送っていたのだろう?
 私がこの身体を捨てたら、どうなるんだろう?

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