ばい
「……ハァハァ…」
ただ夢中でひたすら走った。
こんなに必死で走ったのはいつぶりかわかんないくらいに走った。
仁を失いたくない。
その気持ちだけで走った。
ーバン
「…ハァ……仁!」
「乃亜姉…」
「尚輝、仁は…?」
家に着き客室のドアを開けると仁は居なかった。
尚輝が気まずそうに話し掛けてきたのと部屋を見て嫌な予感がした。
だって…
「なんで仁の荷物がないの…?」
仁の荷物がなくなってたから。
「…仁はスタッフや富田さんが泊まってる旅館に泊まるって。」
「……ッ…」
「乃亜ね…」
私はまた走り出した。
富田さん達が泊まってるホテルまでは車で10分位。
車に乗ればすぐなのに…
私は車のことなんて考えられなかった。
ただ…
『乃亜…』
傷付いた仁の顔しか頭になかった。
仁…
ごめんね…?
会ったら気持ちを伝えるから。
仁が好きだって…
いつか仁の気持ちが変わっても
好きだって伝えるから…
いつもみたいに『好き』って言って
抱き締めて。
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