ばい


「乃亜姉…?」

「え…あ、尚輝」



週刊誌を眺めながら、あの日のことを思い出していたら
後ろから尚輝に声を掛けられた。


尚輝は帽子にサングラスをしていて
少し変装をしてるみたいだった。



「仕事終わったの?」

「あー…今、収録の待ち時間」



尚輝は収録までの待ち時間に買い物に来てるみたいで私は少し周りを見渡した。



「仁ならいないよ…」

「…そっか」



いくら同じ仕事だからって
いつも一緒とは限らない。


わかってるのに…


仁の姿を探してしまう。



「乃亜姉…」

「ん?」

「見合いするって本当?」

「あー…うん」



あの日
家に帰ると親戚のおばさんにお見合いを勧められた。


本当は何度も断ってきてたけど…


最近、お見合いをすることにした。


尚輝はたぶん、麻里さん…
尚輝のお母さんに聞いたんだろう。



「なんで?」

「私も25だし親も孫が見たいって言ってるしね」



嘘は吐いてない。


親に孫が見たいって言われたのは事実。


ただ…



『本当に好きな人と結婚しなさい』



そう言われたことは言わなかった。


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