ばい


「乃亜、なんで…」



なんで乃亜がここにいるんだ…?


このマンションは寝るためだけの部屋だから教えてない。



だから乃亜は俺のマンションは知らないはず…



「尚輝に教えてもらって仁の荷物、持ってきたんだけど…」



あぁ…


そういうことか。


もう関係のない俺の荷物なんてあっても邪魔になるもんな…



「あっそ…」

「…邪魔してごめんね」



乃亜から荷物を受け取ろうとしたとき


乃亜は今にも泣き出しそうな声でそう言った。



やめろよ…



あの時も今も
こんな乃亜を見てたら勘違いする。


乃亜は俺のことを好きなんじゃないかって…


あるはずのないことを期待してしまう。



「…ありがとう」

「…さよなら」



荷物を受け取った瞬間
乃亜はそう呟いて去っていった。


気のせいかもしれないけど…


見間違えかもしれないけど…


泣いてるように見えた。



…きっと見間違えだ。


乃亜が俺のことで泣くわけない。


悲しいけど自分にそう言い聞かせた。


それに…


乃亜は「ばぃ」じゃなく「さよなら」って言った…


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