ばい


「…ただいま」

「おかえりー。どうだった?」

「んー…」



お見合いが終わり家に帰り着くとリビングから
お母さんが顔を見せた。



「いい感じの人だったよ?」

「そう」



お母さんはそれ以上、何も聞いて来なかった。


でも聞かれても困ると思う。



優しそうな人で、この人なら
きっと当たり前の幸せをくれると思った。



だけど…



私は断るつもりでいた。



もう、良い年だし結婚を考えた方がいいのも分かってた。


でも、どうしても仁の顔が頭から離れない。



「乃亜が嫌なら断ってもいいからね?」

「…うん」



お母さんは私の顔をジッと見ながら言った。


たぶん、お母さんは私が断るって決めてることに気付いてる。



…誰かが孫を抱かせることが親孝行だって言ってた。



親孝行出来なくて、ごめんね…?


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