ばい


次の日
東京に帰るため駅で電車を待っていると



「乃亜ちゃん?」



誰かに声を掛けられ振り返った。



「美月さん…」



振り返った先には慎の彼女…
奥さんの美月さんが立っていた。



「久しぶりだね」

「…そうですね」



私は美月さんを見ることが出来なかった。


昔の後ろめたさと


以前、帰ってきたとき慎に抱き締められ


ほんの少しでも慎に揺らいでしまった後ろめたさがあったから。



「隣、座って良い?」

「どうぞ…」



美月さんは私が座っているベンチに座った。



「乃亜ちゃん、彼氏出来たんだね」

「え…?」

「前に一緒に帰ってきてたでしょ?」



美月さんは仁のことを言ってるんだと分かった。


私は今まで一度だって彼氏って存在はいなかった。


だけど以前、帰ってきたときに仁とコンビニに行ってたから。



「乃亜ちゃんに彼氏がいて安心したんだ」

「安心…?」

「これでもう慎に手を出さないでしょ?」



美月さんは顔は笑ってたけど目が笑ってなかった。


きっと…


私と慎の関係を知ってたんだ。


なのに…


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