不器用に優しいアイツ【完】

「え……」


「あと、元々着てた服入れる袋ください」

続けてそういう。


何で……?

確かに、今日の服は自分に合ってないと思った。



でも……そんなに見てられないほど……?

そんなに、酷かったの──?



試着室に戻り、自分が元着てた服をまとめる。


下を向いて、目の奥がジーンとするのが分かる。


「お客様、タグを切らせていただきます」

「あ……お願いします」



涙声と悟られないため、小さな声でそれに応える。


チョキン、チョキンとタグが切られる音がする。


その店員さんは、一体何歳?と問いたくなってしまうような身長で。


その背に合わせるように、あたしは少し屈む。



「──お客様、余計なお世話かもしれませんけど……。

多分あの方はあの方なりの考えがあったんだと思います」

あたしは何も言わず、その言葉を聞く。


「だから……あの方を信じてあげてください」


ポタッと。

雫が一粒零れ。


「……それは、どんな理由だと思いますか?」


震える声で尋ねる。

この人に尋ねるのは間違ってるかもしれない。


でも……聞いてみたくなった。



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