不器用に優しいアイツ【完】
……ここで、帰っちゃおうかな。
気まずい雰囲気の中、そう考える。
何度か思い止まったものの、やはりこの空気に耐えきれず
“チョコのお返し”を渡そうとする。
「ねー、とっしー」
コレ、あげる。
そう続くはずだった言葉は、驚きのあまりなくなる。
もっと簡単に言えば、絶句した。
──……ないっ!!
持ってきた鞄ごとないっ!
「……どした?」
あたしの言葉がいきなりなくなり、さすがに疑問に思ったのかそう聞いてくる。
「ないの……。持ってきた鞄がないの!」
「えっ!?」
さすがに驚いたのか、声を発したあとあたしの手元を見る。
あたしの手には、さっきまで着ていた服を入れた袋と、何故か手に持っているお財布。