不器用に優しいアイツ【完】
「財布は?」
「手に持ってる……」
あたしの返事を聞いて、とっしーははぁとため息を吐く。
呆れられた……。
心のどこかでそう思うものの、頭の中の大半はお返しの事でいっぱいだった。
「……じゃあ」
彼がその言葉の続きに何を言おうとしてるのか、手にとるように分かった。
──分かったから、あたしはその言葉を遮った。
「あたし──……っ
探してくる!」
そう言って──……逃げた。