先生

中から出てきたのは、グレーと黒のツートーンのマフラー。

実はこの日の為に、こっそり先生の好きなブランドをチェックしていたんだ。


先生に少しでも喜んで欲しかったから。


少ししかないけど、おこずかいとバイト代を貯めて買ったプレゼント。


多分、先生からしたらささやか過ぎるプレゼントかもしれないね。


それでも先生は


「純那、すごい嬉しいよ!!!」


と言いながらマフラーを巻いてみてくれた。



私はそんな先生の優しさに、


『大好き』だって再確認しちゃったよ。



「良かった。ってか先生、今巻かなくても」


「良いんだ。巻きたくなったんだから」


だって明らかに暑いでしょ?


それでも、ものすごい笑顔でマフラーを巻いてる先生。


そんな先生を見ていると、良かったって思えるよ。


ホカホカ顔の先生は、

「いくか?」

そう言うと、マフラーを巻いたままコートを羽織りレジに向かった。


少し名残惜しいけど、時計は良い時間を指していた。

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