先生

今年初の雪を先生と一緒に見れて、私は幸せだね。

私は横に立つ先生を見上げながら、心からそう思った。


すると先生は、空を見上げながら


「純那、知ってるか?」


「何を?」


キョトンとする私に、相変わらず空を見上げながら話を続いた。


「雪とか水にも感情が有るんだぞ」


「えっ?」


そう言うと、そっとコートに付いた雪を見せてくれた。


「ちゃんと言葉がわかるんだ。

例えば、この雪に向かって『ありがとう』って言うと綺麗な結晶に変わっていくんだよ。

逆に『馬鹿』とか『死ね』とか汚い言葉をかけると、結晶が崩れるんだ。」



そうなんだ……



私は空を見上げながら答えた。



「じゃあ、みんなが『ありがとう』って思ったら良いね」



「そうだな」



私は空を見上げて居たから、先生の表情は分からないけど、きっと笑顔だったんだと思う。



だって……



降りてきた雪が



きれいだったから。


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