先生
俺はキレた。
咲代を連れて祐輔の家までバイクを飛ばし、祐輔の家に上がりこんだ。
気が付いたら、謝る祐輔の胸ぐらをつかみ2、3発殴っていた。
でも、心の穴は広がるばかりで虚しさだけが残ったんだ……
それでも祐輔は口から血を流しながら、俺に土下座して謝ってきた。
もちろん、許せる訳がない。
最後に祐輔の口から出て来た言葉が
『咲代を俺にください』
だった。
まるで、父親にでもなったかの様な気分だったよ。
咲代は横で涙を流しながら、祐輔の口の回りの血を拭っていた。
そんな咲代を見ながら、いやに冷静になったのを覚えている。
気が付いたら、公園のブランコに乗っていた。
キイキイと音を出しているブランコは、今の俺のバックミュージックになっていた。
どうやって、ここまで来たのか覚えて居ない。
ただ、揺れるブランコの上で涙も流せずに虚無感だけが心を埋め尽くしていた。
最後に見た祐輔の目……
突き刺さる位に真っ直ぐな視線に、きっと俺は負けてしまったんだと思う。