先生
こんなに心が温かくさせてくれる子は、初めてかもしれない。
大学時代に付き合った子達でさえ、自分の事ばかり言い不満をぶつけてきていた。
でも、新庄は違った。
もしかしたら、逆に俺が助けられて居たんじゃないかと思ってしまう。
学校では何かと見ていて、おっちょこちょいで心配だったのもある。
片親だからきっと寂しい思いをしているかもしれないと世話を焼いてきた。
多分、自分のクラスに同じ様な環境の子が居たら、きっと同じ事をしていたと思う。
そんな世話焼きな俺を、新庄は父親的な存在だと慕ってくれているんだと思っていたんだ。
まさか、恋心だったとは……
確かに、生徒から告白される事はしばしばある。
だが、申し訳ないがそんな事は出来ない。
やはり、教師である以上職務を全うしなければならないのだ。
きっと、新庄の事だ。
俺を困らせないように、気持ちを隠していたんだろう。
ガラスに書かれた文字は、そう簡単には消えないんだぞ。
俺は、手袋を取りそっと窓ガラスを触った。