先生
『2人とも休憩して良いよ』
『は――い』
何故か息があった私達は、顔を見合わせながら更衣室へ向かった。
さゆりさんはソファーに腰掛けてから、タバコを取り出した。
先生と同じタバコ。
さゆりさんが吐く煙の匂いをかいでいると、先生がそばにいるみたいな感じになる。
目を瞑る私に
「あれ?純ちゃん疲れちゃった?」
さゆりさんは、私の事を純ちゃんと呼ぶんだ。
「ち、違うんです……タバコ…」
「タバコがどうかしたの?」
口ごもる私に不思議そうなさゆりさん。
「好きな人と同じだなぁ~って……」
すると、さゆりさんはみるみるうちに目が大きくなって
「可愛い!!!!」
そう言いながら、タバコを消して私に近づいてきた。
「どんな人なの?」
興味津々に聞いてくるさゆりさん。
「……引きませんか?」
「たぶん…ってかそう言う筋の人?」
そう言うとさゆりさんは人差し指で頬を縦になぞった。
ありったけの力で首を横に振ると
「違いますよ!!!」
「だよね。で、誰??」
さゆりさんは座り直すと、こっちに体を向けた。
『……先生なんです』
空気が止まった。
やっぱり…引くよね。
しかし、次の瞬間
「良いじゃん!!!!」
と大音量のさゆりさんの声が聞こえてきた。