先生

で、もうバイトを辞めようって思ったんだけど、なかなか諦めきれなかったんだって。


『だって、辞めたら会うことも見る事も出来なくなるんだよ。そんなの耐えられなでしょ?

だから決めたの。
この際、嫌いになるまで好きで居ようって』


そう考えたら、少し楽になったみたいで……

その後、なんと店長は離婚して今度は店長からの告白。

『舞い上がっちゃった』

ってものすごい嬉しそうに言うから、私もつられてにやけてしまう。

後から聞いたら、なんとさゆりさんの告白のタイミングには奥さんと離婚の話は出ていたんだって。

でも、さゆりさんの真剣な気持ちに対して曖昧に答えたくなかったんだって。

だから、しっかり離婚してからって考えて居たんだって話してくれた。


店長がどれくらいさゆりさんを大切にしていたか分かるよね。


「だから、純ちゃん。」

「は…はい」

さゆりさんはギュッと私の手を握り締めた。


「自分の気持ちに素直になりなさい」


そう言って抱きしめてくれた。



「先生と生徒は今の役職なだけ。
大切なのは、人間として好きかどうかだと思うわよ」



さゆりさんの言葉には、説得力が有った。

やっぱり、体験した人だからかな?


温かくて心の鎧が、どんどん溶けていくんだ。


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