先生

私は下を向いたまま

「もう、バイトだから帰ります」

そう言うとクルリと方向を変え、ドアに向かって早足で歩き始めた。

もう少しで、涙が零れ落ちそうだった。


「ちょっと新庄、待ちなさい」


後ろから聞こえる先生の言葉に、振り返りそうになる。


『やっぱり苦しい』


って思っちゃう私は


まだまだ弱いね。


ドアを閉めると、我慢していた涙が溢れ出してしまう。



私は急いで階段を下りると、トイレに駆け込んだ。



――――涙が止まらない



バイトに遅れちゃうよ。。。


そんな気持ちとは裏腹に、一気に流れ落ちてくる涙。

私はカバンを抱きしめたまましゃがみこんだ。



なんで、嫉妬してしまうんだろう。


なんで、先生なんだろう。


解決のしない疑問ばかりが、私の頭の中を駆け巡る。


さゆりさんに会いたい。


私はヨロヨロと立ち上がると、鏡を覗き込んだ。



ヒドイ顔。



目が腫れちゃって、いかにも泣きましたって顔。


きっと、醜い涙は醜い顔にさせるんだね。


私は水で目を冷やし、少しでも腫れを引かせようとしてみた。


何とか落ち着いた私は、トイレから出た。

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