先生

今まで目を離さなかった純那が、私を真っすぐに見た。

いや、正確に言うと見上げていた。


目にはうっすら涙を溜めながら


「辞めるの?」


ちょっと圧倒されながらも、


「いや、例えばだって…」


取り繕った笑顔。

別に、大した意味は無いのにいつも真っ正面から向き合ってくれる純那。


「嫌だよ、もちろん。でも……」


ぎゅっと手を握り締めてくる。



でも??



私は純那の言葉を待った。


「でもさ、篠がどうしても辞めたい理由があるなら仕方ないかなって……

 私は、篠に幸せになって欲しいから」




――――ズキン




胸が締めつけられた。



純那はすごい。



いつも真っ正面から体当たりで来るんだ。


決して逃げない。



私は?




……もしかして、私は



大きな過ちを犯す所だったのかもしれない。


そう、いつの間にか


『夢に向かって』


じゃなく、ただ


『ライバルに負けたくない』


という、プライドの為になっていたんじゃないかって。

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