先生
「いやっ…何でもないわ」
慌てて前言撤回する私に
「何でも無くないだろ?話せよ」
そう言って、ピッとテレビを消した先生。
テレビの音が消え無音の室内はやたら静かで、冷蔵庫のウィーンと言う音だけが室内に響き渡っていた。
「いやっ…あの……」
聞けるわけ無いよ。
『なんで口にキスしてくれないの?』
なんてさ。
「ん?どうした?」
優しく聞いてくる先生は、私の手の上にゆっくりと自分の手を重ねた。
温かくて大きな手は、私の不安な心をすぐに解きほぐしてくれるんだ。
何だか、今までの不安が嘘みたいに溶けだしていく。
私が好きで、少なくとも先生も好きで居てくれてるんだ。
それだけで、充分だよね。
もしかしたら私、急ぎすぎていたかな?
先生の手の温もりを感じながら、笑顔で
「何でもない。先生、大好き」
って答えたんだ。