先生

「そんな顔するなよ」

そう言いながら、私の手を握りしめた先生。

片手でウィンカーを出しながら、車を路肩に寄せた。

キュッとブレーキを踏むと、ハザードを点滅させてパーキングに入れた。


「…先生?」


また駄々っ子になって居た私。

困らせてるはずなのに、嫌な顔せずに私を包み込んでくれるんだ。

先生の顔が近づき、2人のおでこがごっつんこする。


「帰したくなくなるだろ」


間近でそんなセリフを言えちゃう先生は、ドキドキしないのかな?

私は先生の吐息に、おかしい位ドキドキしてるんだよ。


「帰さないでよ。先生と…もっと居たい」


先生の顔が、より近づいて来る。

私は静かに瞳を閉じた。

不意に、先生の体が遠のいた感じがした。

ん??


先生は、ひと呼吸置くと


「帰るぞ。親御さんが心配する」


そう言いながら、体を前を向けた。

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