先生

先生がギアをドライブに入れた。


「待って!!」

発進しようとする先生を制し、私は先生に叫んでいた。

しかし、私の叫びも虚しく車は発進していくんだ。


「なんで…なんでキスしてくれないの?」


私は構わず、運転する先生に聞いてみた。

いや、その訴えは私の独り言の様に、行き場もなくさまよっていた。


「シートベルト締めたか?」


先生は、私の言葉なんか聞こえなかったかの様に優しく聞いてきた。


「先生、ちゃんと答えてよ!!」


私の声が車の中に響きわたったいた。

しかし、その声もただ空を漂ったまま車内は静寂に包まれてしまった。


赤信号で車が停まると、ようやく先生は口を開いたんだ。


「好き過ぎだから……」


「えっ?」


思わぬ先生の答えに、私はマヌケな声を出していた。

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