先生
危うく口からタバコが落ちそうになった。
「ねっ、なかなかでしょう」
ニヤニヤ笑いながら話しかけてくる土屋先生に、曖昧な返事を返した。
やっぱり、妙子だ。
少し痩せて大人びてはいたが、昔の妙子の面影が有った。
苦い思い出が蘇ってくる。
たった1度の過ちで、
取り返しがつかない傷をつけたんだ。
若かったとはいえ、軽率だった。
灰が落ちる寸前で、灰皿にタバコを押し付け火を消した。
純那を待たせて居る事を思い出したのだ。
俺は準備室である、通称【俺ん家】に急いだ。
ドアを開けると、純那は俺の携帯に付いているイルカのストラップを眺めていた。
可愛い。
「コラッ」
その瞬間、純那の体がビクッと反応した。
―――ガチャ
俺は鍵をかけると、純那から携帯を取りあげたと同時に、純那を抱きしめていた。