先生
一色 妙子の思惑

「……うそ」

私は1枚のプリントを手にしたまま、固まってしまっていた。

そのプリントとは、今度代理で行く高校から送られてきた資料なのだが、その内の1枚に目を奪われた。

先生の名前が一覧表になっているリスト。

その中に見つけた、懐かしい名前。


【真咲 慎弥】


同姓同名?

いや、有り得ない。

こんなホストみたいな名前が本名の人は、そうそう居るもんじゃないもの。


忘れる訳が無い。


大学時代で……
いや、今までで唯一愛した人の名を。


一気に思い出すあの時の感情に、少し目眩がした。

私はお腹に手を当てて、あの日の罪を思い出す。


狂いそうになる程辛かったあの時の感情が押し寄せて、吐き気を催しトイレに駆け込んだ。


こんな事じゃ、仕事にならないじゃない。


意外と繊細な自分にびっくりしながら、コップに水を入れうがいした。


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