先生
慎弥の追いかける感じを見て、ピンときたのよね。
『あっ、怪しい』って
新庄さんって言うのね。
とりあえず、頭の中にインプットしておいた。
戻ってきた慎弥に
「大丈夫?」
って聞いたら、鼻を触りながら
「ああ、大丈夫大丈夫」
そう言いながら、携帯をポケットにしまっていた。
新庄さんが心配なのか、さっきより落ち着かない慎弥。
なるほどね、分かりやすい。
その時、何かが音を立てて壊れていくのを感じた。
あれから、私は立ち直るのに5年もの歳月が要ったのに、慎弥ったらぬくぬく仕事をして若い生徒に手を出し幸せな恋愛をしている。
何故、私だけ苦しまなきゃならないの?
苦しみが蘇り、それが憎悪に変わるのにそう時間はかからなかった。
私の体を傷つけ、心までも傷つけた男。
そんな男が、幸せに暮らしている事が許せなかった。