先生
「妙子には…本当に悪い事をしたと思っている。本当にすまない。
謝っても許してもらえる事じゃないのは重々承知だ」
慎弥は頭を下げたまま、懺悔の言葉を口にした。
何が分かるのだろうか?
この男に、私が味わった5年間の間の苦悩の何が分かると言うのだろう?
激しく燃え上がる憎悪の炎に包まれながら、私は慎弥に優しく答えた。
「もう、昔の事だから」
慎弥も私の言葉に安心したのか、頭を上げて少しホッとした表情をした。
男って生き物は……
私は笑顔のまま立ち上がり、準備室を後にした。
明日からは、新庄さんの事の下調べをしなきゃならないわね。
忙しくなりそうだわ。
あの子にも、私と同じ気持ちを味わせてあげなきゃならないんだから。
久々に、軽い足取りで家路についた。