先生
「幸せだったわ。慎弥は完全に酔っ払っていたけど、それでも嬉しかった。
慎弥はああいう性格だから、私を抱いた事を知ると付き合うと言ってくれたの。
どこまでも律儀な男よね」
真咲先生なら、きっと責任を取るはずだ。
先生の取った行動は、確かに先生の律儀さを物語っていた。
「それから、慎弥と私は半同棲していたの。1ヶ月位経った頃かしら?
生理が遅れて居たのよね。
まぁ、不順だったから大して気にしていなかったけど、さすがに不安になって妊娠検査薬を試したの」
「……まさか」
一色先生は、お腹をさすりながら
「その、まさかよ。
妊娠検査にくっきりと陽性反応が出たの」
「うそ……」
膝が抜けそうな私は、必死に窓際の柱を掴んでいた。
「すぐに病院に行ってみたけど、やっぱりできていたわ。
びっくりしたけど、私嬉しかったのよ。
慎弥の子供なら産みたかった」
ゴクリと唾を飲み込んだ。
たまに吹く風が窓を揺らす。
私の体からは、完全に血の気が無くなっていた様な気がする。