先生
―――チン


乾いた音を立てて止まったエレベーターの扉が少し開いた所を、すり抜ける様に外に出た。

廊下をバタバタと走りながら、303号室を目指した。


……301…

…302……



有った!!!



私は開いたままの入り口から中に走り込み、お母さんを探した。


お母さん……


私はお母さんに駆け寄った。
お母さんは、点滴をしている以外は普通に眠っている様に見えた。

「娘さん?」

近くに居た看護婦さんに聞かれ、初めてそこに看護婦さんが居た事に気が付く。

「はい。母は…母は大丈夫ですか?」

「大丈夫ですよ。過労だったのね。今は疲れて眠ってますが、時期目を覚ましますよ」

そう言うと、笑顔を作り看護婦さんは他の人の所に行ってしまった。

私はお母さんの側まで行くと、置いてあったパイプ椅子に座った。

少しひんやりした椅子は、感情的になりそうになった私を冷静に戻してくれた。

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