先生

「家に来た慎弥ったら何をしたと思う?」

「……」

無言の私に、一色先生は言葉を続けた。

「土下座したのよ。土下座しながら『申し訳なかった』って何回も何回も……」

一色先生は言葉を詰まらせた。
真咲先生が、土下座をしたなんて……

私は、間違った事をしてしまったのだろうか?


「そしたら、慎弥そのまま倒れちゃってね。ひどい熱だったから、介抱したの。

慎弥ったら、私が介抱してるのにうなされながらあなたの名前を呼んでいたわ」


一色先生は、下唇を噛み締めながら必死に言葉を続けた。

「その後、回復した慎弥と話し合ったの。何でもするから、新庄には手を出さないでくれ…そう言うの」


真咲先生。
不器用なんだから……

私なんか、どうなっても良かったのに。


「慎弥は私に優しくしてくれたわ。何でも言うことを聞いてくれたし、ずっと家に居てくれていた。

でも、一緒に居れば居るほど虚しくなるのよ」

少し感情が露わになる。
コーヒーを口に含み、冷静さを何とか保とうとしていた。

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