先生

「慎弥の心の中には、私なんてこれっぽっちも居ないのよ。慎弥が守りたいのは、あなたよ新庄さん。

それが、嫌って程分かったわ。
あなた達は、深く愛しあってるからこそ、お互いを守り合って居たのね」


一色先生は泣いていた。
静かに泣いていた。

でも、その涙はすごく澄んでいて美しかった。


「魔がさしたのね。危うく昔私が受けた事と同じ事を、あなたにする所だったわ。

慎弥とは、もう話し合ったから。あなたには本当に悪い事をしたと思っているわ。
本当にごめんなさい」


一色先生は頭を下げながら、私に謝ってきた。


「一色先生…頭を上げて下さい！！」


私は慌てて一色先生に言った。

こういう時って、何て言ったら良いんだろう？

うまい言葉が見つからずに、ただオロオロしているばかりだった。


「先生…ごめんなさい」


私は謝っていた。
昔の傷を治してもらいたかったのに、また傷を負わしてしまったみたい。

また、辛い気持ちにさせてしまった。


「大丈夫よ。もう吹っ切れたから」


先生は涙を拭き、笑顔で答えた。