先生
久々に乗る先生の車。


病室から出ると、急に意識しちゃって私は無言になってしまった。

先生の少し後ろを歩き、駐車場まで向かったんだ。

ぎこちない私をよそに、先生はスマートに私を助手席にエスコートした。


そして、言われるがまま助手席に座っていた私。


前は私の特等席だった助手席。

久々に座った助手席は、少し恥ずかしくて落ち着かなかった。

先生は窓を開けると、タバコをくわえた。
火をつける時、少ししかめっ面になる。

そんな先生の顔が、好きだった。

1つ息を吐くと、タバコの香りが室内にも漂ってくる。
私の鼻は、まだ先生のタバコの匂いを覚えていたんだ。

「久しぶりだよな」

真咲先生は、外を向いたまま私に話しかけてきた。

「そうだね」

先生はゴソゴソとコートのポケットを弄ると、何かを私に渡してきた。

「はい」

グーにした先生の拳の下に、私は手のひらを差し出して

「なに?」

私の言葉と同時に手のひらに落ちてきたのは、一粒のミルキーだった。
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